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04 らくだの旅行ができるまで(1) 構想編

 個人運営のウェッブサイトってまさに星の数ほど存在しています。でも意外とお互いにどんなふうにして作っているのか知らないのではないでしょうか。サイトの運営はけっこう孤独で地味な作業です。家でコツコツコンテンツを作ってはアップするという作業の繰り返し。中にはグループで運営したり、家族で役割分担しているところもあると思いますが、基本的には個人の作業。見た目の華やかさとは異なり、実は暗〜い世界だったりするわけです。

 インターネット上には「どう作るべきか」ということを論じたサイトも多々あります。でも実際に普通に運営されているサイトで、裏話的にどうやって作っているかを掲載しているところはあまり見かけません。見たい人がどの程度いるかわかりませんが、でも少なくとも僕は他所のサイトがどんな考えの下に作られていくのか知りたいと思っています。自分が知りたいことは人も知りたいに違いない。というわけで、「らくだの旅行」を作るときに僕が考えたこと、そして実際にどういう過程を経て造っているかをかを紹介したいと思います。

 なお最初にお断りしておきますが、個人サイトの運営は個人商店を経営するようなもの。それぞれが自分の考えで好きなようにやれば良いわけで、そのやり方についてとやかく言うつもりは毛頭ありません。むしろみんな同じでなくて、いろんなやり方があっていいと思っています。僕の考え方もその中の一つに過ぎません。こういうものの正解は一つではないのです。だからくれぐれも僕が他の方を批判していると受け止めないようにお願いいたします。

〜きっかけ〜

 僕が自分のホームページを作りたいと思ったのはある旅行サイトを見たのがきっかけでした。そのサイトの主は僕と同じように世界中のあちらこちらを主にツアーで旅行されていて、各旅行ごとにとてもきれにその内容をまとめて公開していたのです。内容もとても充実していて見やすく写真もたくさん出ている。しかも各コンテンツは同じように作られているのではなくて、旅行先ごとにいろいろ趣向が凝らされていて飽きない作りになっています。いつかこんなホームページを自分も作りたい、それが最初のきっかけです。ただ、それは具体的なイメージではなく、なんとなくそういう気持ちが芽生えたという程度のものでした。

 次のきっかけは、モロッコのツアーで親しくなった女性がサイトを作ったことです。彼女は僕が知り合った後にパソコンを「衝動買い」で購入し、そのままほとんどなんの知識も無いままに勢いでサイトを立ち上げてしまったのでした。さすがにこれはショックで、いろいろ考えてはモタモタしていた自分を反省したのでした。

 さて、そんな頃、たまたま購入したヤフー・インターネット・ガイド誌の特集が「ホームページ作成」で、連動企画として初心者向けのコンテストが開催されていたのです。そこでどうせなら、これに応募することを目標にサイトを作ろうと決心して作業に取り掛かったのでした。これが僕が「らくだの旅行」を始めたきっかけです。

〜意味〜

 では実際に造る時に僕が一番考えたこと。それは「僕がサイトを作る意味」です。

 もちろんYIG誌のコンテストは一つの目標でしたが、それは当面の目標に過ぎません。むしろこれは手段。そもそもコンテスト応募に際して僕が考えたのは、応募サイトの一覧が掲載されれば、それを見た人が見に来てくれるのではないかという程度のものでした。実際には応募サイト一覧なんて掲載されなかったので、入賞しなかったら全く意味が無かったわけですが。

 さて当時、既に数多くの旅行系サイトが存在していました。情報系から旅行日記、旅行写真が主なものまで、タイプも多彩です。そんな中で「今更、自分がサイトを作って公開する意味があるのだろうか?」
このことは僕にとって大きな疑問でした。

 旅行先に関する情報ならそれ専門のBBSなどが多く存在しています。もちろんガイドブックもたくさん販売されている。旅行記ならプロの書いた旅行記本が多数存在するわけだし、旅行先の写真ならプロの撮影した写真の方がきれいに決まっている。そんな中で自分が時間をかけてサイトを作る意味がどこにあるんだろうか。逆に言えば自分が作る意味のあるサイトってどんなものだろうか。

 そんなことをいろいろと考えていくうちに行き着いた答えが、「自分が見て感じたことを伝えればよい」というあたり前のことでした。

 僕が見たものは、基本的に僕と一緒にその場にいた人しか見ていません。どんなすごいプロのカメラマンでもその場にいなければ全く同じ写真を写すことは出来ません。僕が体験したことは、基本的に僕しか体験していません。僕が書かなければ、僕の体験はノーベル賞作家だって書くことはできないのです。

 たとえそれが下手な写真でも、拙い文章でも、僕が見て感動したこと、体験して感動したこと、それを伝えることは僕にしか出来ない。だから自分が見て感動したこと、自分が体験して面白かったこと、その気持ちをできるだけリアルに伝えること、それが僕の導き出した「サイトを造って公開する意味」の答えでした。そしてその気持ちを自分の身近な人にだけでなくより多くの人へ伝えたい、そう考えたのです。

〜スタイル〜

 次に僕が考えたことは、それをどう伝えるかということです。自分が見たこと、体験したことを伝えると言っても方法はいろいろあります。一般的な旅行記サイトの様に、日を追って日記風に書き連ねて行っても良いし、旅行写真サイトの様に一枚一枚写真をめくっていく方法もあります。

 こうしたサイトの中にはもちろん素晴らしいサイトもたくさんありますが、でも僕は自分のサイトでは違うことをしたいと思っていました。理由は簡単。僕が「旅行日記」だけを読んだり、「旅行写真」だけを見るのが苦手だということです。

 僕はどちらかと言えば読書が好きな方です。本を読むことで自分ができない体験を間接的にしたり、知らなかった知識を得ることができます。でも、インターネットで長い文章を読むというのがどうも苦手なんです。もちろん、知人のサイトであれば、どんな旅行をしたのか興味を持って読み続けられるし、旅行を題材にしたテキストサイトであれば、「書く」ということにとても気を遣っているので安心して読み続けられます。むしろ文章が面白くて、行く予定が無い国の旅行記も読んでみたくなったり。

 でも、根気の無い僕は、どうも長い旅行記を読み続けるのが苦痛なんです。だから、残念ですが数ページ読んでダメだと思ったら他へ行ってしまう。もしかしたらその先に素晴らしい情報があったとしても。

 同じことが自分のサイトにも言えると思ったのです。僕は自分の文章力にそれほど自信はありません。とくに面白おかしく「読ませる文章」。これは最も苦手な分野です。自分が苦手なこと、自信が無いことはできない。だから「日記風」にはしないことにしました。

 では旅行写真サイト型は?実はこれも僕の苦手な分野です。写真ばっかりだと見ていて飽きちゃうんです。時々誤解されますが、僕は決して写真が趣味なわけではありません。はっきり言って普段は一枚も写しません。僕が写真を写すのは旅行で見たものを記録するためなんです。だから本当は写真そのものには全くと言って良いほど興味が無いんです。本当に興味があるのは「その後ろ」にあるものなのです。

 もちろんプロのカメラマンなら写真だけで「その後ろ」にあるものを伝えることができるだろうし、アマチュアカメラマンの方の中にも素晴らしい写真を写す方はたくさんいます。でも残念ながら僕にはそんな力量はありません。写真だけで伝えることはできないと思ったのです。

 そこで僕は考えました。一つの旅行というのはコンテンツの集合体です。例えば観光、食事、宿泊、買い物、移動、ハプニング(?)などの本来個別の「コンテンツ」を組み合わせることで旅行は成立しているわけです。「パッケージツアー」というのはこういうコンテンツがパッケージになっているという意味です。

 だったらサイトのコンテンツもこれに合わせて分解したらいいんじゃないか。つまり1つの旅行を「通し」で記述するのではなくて、その中の面白かった体験を抜き出して詳細に記述する。あるいは良かった観光名所などの写真を集中的に掲載する。「何日目」というくくりではなくて「死海浮遊体験」とか「ハレアカラ・サンライズ」というふうに、旅行からその部分だけを抜き出して、一つ一つのコンテンツにしてしまったら良いのではないかと考えたのです。

 死海の体験にしてもハレアカラの朝日にしても時間にしたら30分程度のことです。普通に旅行日記で記述したら数行で終わらせてしまうような時間です。でもその30分間を詳細に記述し、写真を段階的に見てもらうことで、より臨場感溢れるコンテンツが出来上がるのではないかと考えたのでした。そして写真で文章を補い、文章で写真を補う。そうすれば自分の感じたことをリアルに伝えられると思ったのです。これが「写真記」、「体験記」、「溜息」、「博物館」という各コンテンツになったのです。

 こうして「らくだの旅行」の基本的な構想が出来上がったのでした。


その2へ続く



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